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『居場所のちから~生きてるだけですごいんだ~』西野博之(教育史料出版会)

居場所のちから~生きてるだけですごいんだ~

→紀伊國屋書店で購入

「居場所を生み出す「まなざし」これだけは手に入れたい15の心得」

NPO法人フリースペースたまりばの西野さんに

何度か、お会いしたことがある。

穏やかな、すきとおった瞳ですうっと心の中に入ってくる人。

これだけですごい。

気が付いたら魂の根っこあたりで握手しちゃってる。

大きな樹の洞にぽっこり入れてもらって、

こぽこぽと、大地から水を吸い上げる音に耳を澄ましているような

ゆったりとした時間がながれる。

大きく、ただそこに「在る」ことで、子どもたちに居場所をつくっていく人。

その瞳の奥の想いを、少し、分けてもらえるような一冊。

子どものそばにいて、何ができるんだろうか。

正解はないからこそ、親はもちろん、周りの大人は悩むんだけれど

その悩み方の方向はどっち?

悩めるってこと自体が力がいることなんだ

ということも、たくさんのエピソードの中で浮き上がってくる。

登場する子どもたちの様子を読みながら、

西野さんはエピソードが語れる人なんだ、と思った。

子どもとともにありながら、そこにある毎日からエピソードを切り取り

膨大な蓄積のなかから提言してくれているたくさんのこと。

あの、すきとおった瞳の魅力は、

子どもたちをみつめるまなざしの深さなんだとわかる。

人と人がつながることの大切さを、皆声をそろえて言うけれど

絆とか、つながり、っていうけれど

そうそう簡単なもんじゃない。

生きてるだけですごいんだ、と

シンプルに伝えつづける場をやりつづけるその覚悟から

学ぶべきことはたくさんある。

「居場所」をつくる側へ、まわらなくっちゃいけないよ。

そんな西野さんの声も聞こえてきそうだ。


→紀伊國屋書店で購入