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アンディ・リーズ『遺伝子組み換え食品の真実』(白水社)

Theme 10 健やかに蝕まれて

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「結局彼らの真の目的は、貧農の飢餓を解消することではなく、企業が食料の生産と流通を支配することにあるのだ」。環境運動家である著者は、遺伝子組み換えをめぐる問題について、その前史より説き起こす。1940年代に始まった工業型農業はやがて途上国へと導入され、食料増産を達成した「緑の革命」はしかし、農民層における貧富の拡大や自然の多様性喪失といった事態を生みだし、遺伝子組み換えが喧伝されているのもそれと軸を一にする等々。この原因を著者は冒頭の一文で表す。彼らとは誰か。「食品の生産から流通までを世界的に支配している」一握りの多国籍企業である。世界には巨大なマーケットがまだまだ残っているというわけだ。それらの企業が政府、研究者や国際機関を抱き込みながら多くの国で、フセイン政権打倒後の占領下などあらゆる場面で己が農法を広げてゆく過程、その「技術」の危険性が詳細に記される。正面切って語られることは少ないものの、それは現在の、食だけの問題でもなかろうというのが著者の見立てである。

かような現況に対する抗議活動や一人一人にできる具体的行動に触れ、糾弾に終始せず、希望の「兆し」も綴られる。食料自給率やTPPと絡めて日本における様相をまとめた訳者解説で既視感さえおぼえるのは、さもありなんか。日頃より「原材料名:じゃがいも(遺伝子組み換えでない)」を確認せずにポテトチップスを購入している諸賢に一読を。

みすず書房 飯島 康・評)

 ※所属は2016年当時のものです。