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プロの読み手による書評ブログ

『The Book of Fate』Brad Meltzer(Grand Central Pub.)

The Book of Fate

→紀伊國屋書店で購入

「大仕掛けのスリラーを読む醍醐味が味わえる作品」


 面白いスリラーというのは、一度読み始めたらなかなか本を離すことができない。今回読んだのはブラッド・メルツアーの『The Book of Fate』。

 ペーパーバックとはいえ600ページある作品なので、読み応えがある。

 本を片手にベッドからカウチ、床にも寝転がり読み続ける。ペーパーバックのなかでもマスマーケット版と呼ばれる小振りの本なので、仰向けになりながら読んでも手が疲れることはない。しかし、文字が小さいので目が疲れる。

 いい加減なところで辞めようと思うのだが、物語の早い展開と繰り出される謎の数々で気持が高ぶり、次の章まで、いやもうひとつ先の章までと読み続けることになる。

 物語の方とはいうと、主人公はアメリカ大統領の元補佐官ウェス・ホロウェイ。

 8年前、当時大統領だったレランド・マニング一行はカーレース場で暗殺事件に逢い次席補佐官であるボイルが死亡。ウェスも跳弾を受け、片方の頬が動かなくなる傷を負う。

 ウェスは、2期目の選挙で敗退したマニングのもとで以前と同じように彼の身の回りの世話をする役目を務めていた。マレーシアでスピーチをするマニングに同行したウェスは、そこで死んだはずのボイルと遭遇する。

 何故ボイルが生きているのか。ボイルが生きていることをマニングは知っているのか。あの暗殺はマニング自身が仕掛けたものなのか。もしそうだとしたら、マニングは10年近く忠誠を誓ってきた自分を裏切っていたことになる。何故、マニングは暗殺劇まで使ってボイルを死人に仕立て上げる必要があったのだろうか。

 事件はここから急展開をみせ、CIA,FBIシークレットサービスを巻き込み、フリーメーソンの歴史、第3代大統領トマス・ジェファーソンが用いた暗号など次々と謎が深まっていく。

 登場人物もゴシップ・コラムニストのリスベス、アメリカ政府に情報を売る謎の人物ザ・ローマン、その後ろにいるといわれるザ・スリー、 精神を病んだスナイパーなど多彩だ。

 大仕掛けのスリラーを読む醍醐味を満喫できる作品だ。


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