書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『シラーの「非」劇-アナロギアのアポリアと認識論的切断』青木敦子(哲学書房)

→紀伊國屋書店で購入 「疾風怒濤」を思いきって「ゴス」と呼んでみよう ゲーテは尊敬するが、愛するのは誰かと言われればシラーである、というのがドイツ人の口癖だとはよく聞く話だが、一体、いま現在の日本にとって古くて遠いドイツロマン派の劇作家・詩人…

『ティファニーで朝食を』トル-マン・カポ-ティ 村上春樹訳(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「ホリー、ホリー、ホリー!!!」 ここ数年の新訳ブームのなか、サリンジャー、フィッツジェラルド、チャンドラーらの「名作」を満を持してとばかりに訳出してきた村上春樹だが、なにより私が「村上訳」を願ってやまなかったのが本書で…

『ミッドナイト・クライシス』茅野裕城子(集英社)

→紀伊國屋書店で購入 「真夜中の危機を越えて」 「生理が来ない」ということは、かなりの一大事だ。まっさきに思い浮かぶのは妊娠で、身に覚えがない場合はストレスからくる体の不調による生理不順だったりもする。婦人科系のトラブルを心配しなければならな…

『Architecture : A Very Short Introduction (Very Short Introductions Series) 』Ballantyne, Andrew(Oxford Univ Press)

→紀伊國屋書店で購入 「建築学超入門」 ゴダールの映画「軽蔑」の後半シークエンス全面に使用されている非常にインパクトのある建物が、カプリ島のマラパルテ荘である。イタリアの有名建築雑誌「Domus」の過去50年間イタリア建築ベスト選でも第一位に選ばれ…

『パラドックスの扉』中岡成文(岩波書店/双書 哲学塾)

→紀伊國屋書店で購入 「知」は何かを明らかにしつつ、他の何かを覆い隠してしまう 書評シリーズとして持つべき選択と論旨の連続性を少し破って伴田氏による19世紀末の天才パズルメーカーの作品集を取り上げたのは、実はこの『パラドックスの扉』とペアにして…

『ガラスの宮殿』アミタヴ・ゴーシュ著、小沢自然・小野正嗣訳(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「モノクロからカラーへ」 すばらしい。600ページを超える大著の最後の最後に、こんな感動的なラストシーンが待っているとは。映画『ニューシネマ・パラダイス』のそれにも似た見事な幕切れで、不覚ながら涙を禁じえなかった。 アミタヴ…

『閉鎖病棟』帚木蓬生(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「閉鎖しているのは病棟なのか?」 久しぶりに小説を読んだ。本書を手にとったのは、確か東京駅地下の本屋だったと思う。 商売柄か、題名にまず惹かれた。『閉鎖病棟』。そしてまたちょうどその頃、厚生労働省で障害者団体の交渉があり…

『The God Delusion』Richard Dawkins(Mariner Books)

→紀伊國屋書店で購入 「ドーキンスにとって神は存在しない」 ノーム・チョムスキー、スティーヴン・ホーキング、ウンベルト・エーコなどと並ぶ頭脳の持ち主であるリチャード・ドーキンス。オックフォード大学に所属する進化生物学者でもある。 彼の『The God…