書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2009-10-31から1日間の記事一覧

『ぼくらの頭脳の鍛え方』 立花隆&佐藤優 (文春新書)

→紀伊國屋書店で購入 分類からいうと読書案内ということになろうが、副題に「必読の教養書400冊」とあるように、すぐに役に立つ本ではなく、教養というか知の基礎体力をつけるための指南書である。 同じ方向の本としては立花氏の東大での講義をまとめた『脳…

『ロシア 闇と魂の国家』 亀山郁夫&佐藤優 (文春新書)

→紀伊國屋書店で購入 『カラマーゾフの兄弟』の新訳で一般読書界にも知られるようになった亀山郁夫氏との対談本である。 亀山氏も佐藤氏も今ではジャーナリズムのスターであるが、もともとロシア語業界というマニアックで狭い世界の住人だけに、『罪と罰』の…

『本格小説』水村美苗(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「救いの無い絶望」 仕事でハンガリーのブダペストに行ってきた。幸いバカンス時期だったので、会議が終ってから数日間私的滞在を続けた。温泉で有名な町なので、日本とはまた違った形の温泉を楽しめた。偶然同じホテルに滞在した、同僚…

『論語』孔子著 金谷治 訳注(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「孔子もつぶやいていた。」 twitterが流行しています。このミニブログのシステムは、気軽にできるブログのようなもの、と思っていたのですが、実際に使ってみると、ブログとはまったくの別物。mixiよりも適度な距離感があって、ストレ…

『通話』ロベルト・ボラーニョ(白水社)

→紀伊國屋書店で購入 失うもののない人生の「落後者」が放つ聖性 ロベルト・ボラーニョという作家を、この本ではじめて知った。本邦初訳だし、知らない作家はこの世にたくさんいるものだが、彼の場合は「こういう作家がいるとは知らなかった」と言ってみたい…

『私小説のすすめ』小谷野敦(平凡社)

→紀伊國屋書店で購入 「私小説を断固として擁護する、小谷野節が炸裂!」 先日、はじめて浜松文芸館に行ってきた。浜松市の文芸活動を紹介する公的な施設である。とくに、浜松に約半世紀住んで、眼科医を営みながら作家活動をした藤枝静男の存在をアピールし…

『読まず嫌い』千野帽子(角川書店)

→紀伊國屋書店で購入 読み巧者は幼いころから本の虫、と思っていたら、「児童文学に漂う『お子さんには山葵抜いときました』的な感じが気持ち悪くて」小学生時代は漫画以外の本はほとんど読まなかったという著者が小説に目ざめたのは十三歳のとき、きっかけ…

『マキァヴェリアン・モーメント―フィレンツェの政治思想と大西洋圏の共和主義の伝統』ポーコック,ジョン・G.A.(名古屋大学出版会)

→紀伊國屋書店で購入 良い行為もしくは正しい行為は、たとえ、それが神と人間に知られることなく、隠されたままだとしても、良い行為、正しい行為であるだろうか?(ハンナ・アレント「政治の季節」筑摩書房) 再びマキャヴェベリが静かなブームである。どう…