書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2010-08-31から1日間の記事一覧

『奪われた性欲』今一生(毎日コミュニケーションズ)

→紀伊國屋書店で購入 「性欲減退男子よ、どこへ行く?」 近年、マッチョな文体で社会起業を語ることに専念しているフリーライター、今一生の最新作である。 今一生のマッチョ信仰は強固でシンプル。尊敬する人は漫画家の本宮ひろし。サラリーマン金太郎のよ…

『小さな生きものたちの不思議なくらし』甲斐信枝(福音館書店)

→紀伊國屋書店で購入 受粉を手助けしてくれる蝶の到来を待つオオイヌノフグリ、きゃべつの葉裏で静かに成長するモンシロチョウの蛹、田んぼのあぜ道に燃え立つように咲くヒガンバナ、綿毛を風に乗せてまき散らすオオアレチノギク、捕獲したアオムシを巧みに…

『荷風と東京』川本三郎(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「街歩きと日常」 川本三郎の街歩きエッセイが好きだ。夜中に灯りをつけて読むのもいいが、旅先の各停車中で読むのもまたいい。じぶん自身の旅と、著者の語る街歩きとが重なりあって、愉しみが二乗される気分になる…

『怒らないこと』アルボムッレ・スマテサーラ(サンガ)

→紀伊國屋書店で購入 「怒らないという生きるスキル」 ブロガーの小飼弾さんの著書『働かざるもの、飢えるべからず』小飼弾(サンガ)のなかで、弾さんと対談していた仏教者、アルボムッレ・スマテサーラの語りである。 弾さんのベーシックインカム論を補強す…

『I Was Told There’d Be Cake 』Sloane Crosley(Riverhead Books)

→紀伊國屋書店で購入 「若い独身女性とニューヨークの街が引き起こす不協和音」 ニューヨーク郊外のホワイトプレーンズで子供時代を過ごし、ニューヨークで働き出した20サムシングの女性スローン・クロスリー。この本は彼女のユーモラスなエッセイ集「I wa…

『ガリツィアのユダヤ人-ポーランド人とウクライナ人のはざまで』野村真理(人文書院)

→紀伊國屋書店で購入 ドイツとロシアの2つの大国に挟まれたポーランドの悲劇は、一般によく知られている。しかし、そのポーランドが逆の立場に立っていたことを知る日本人はそれほど多くはない。そして、そのことを知ることによって、ヨーロッパの歴史と社会…

『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』藤原新也(東京書籍)

→紀伊國屋書店で購入 「都会に追い詰められない、静かな語り」 浜松から東京に行く用事があった。私は、新幹線なのかなでiPhoneをいじり、ツイッターでつぶやきを仮想空間に発信していた。静岡県内の風景は美しい青空だった。小田原駅から空がガスに覆われて…