書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『カップヌードルをぶっつぶせ!-創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀』安藤宏基(中央公論新社)

→紀伊國屋書店で購入 創業者の話は、おもしろい。成功した自慢話ではなく、いくつも失敗した話が聞けるからである。成功した実績のある創業者にたいして、それを創業者の目の黒いうちに受け継いだ2代目やサラリーマン社長の話は、おもしろくないのが普通だ。…

『アンフォルム:無形なものの事典』イヴ=アラン・ボワ+ロザリンド・E・クラウス(月曜社)

→紀伊國屋書店で購入 「絵画の水平性とその先」 本書は、二人の美術批評家(ロザリンド・クラウスとイヴ=アラン・ボワ)が1996年にパリのポンピドゥー・センターで組織した展覧会のカタログとして書かれた。しかし、一読して明らかな通り、その内容は通り一…

『街道の日本史49 壱岐・対馬と松浦半島』佐伯弘次編(吉川弘文館)

→紀伊國屋書店で購入 本書の「あとがき」は、「日本国内をくまなく歩いた民俗学者宮本常一」の「かつて僻地には想像以上に文化が定着していた」ということばではじまる。本書で取りあげた「壱岐・対馬と松浦半島」は、僻地ということなのか。この地方の人口…

『スローカーブを、もう一球』山際 淳司(角川グループパブリッシング)

→紀伊國屋書店で購入 「静かな、スポーツ・ノンフィクション」 先日、箕島高校野球部の元監督、尾藤公氏が亡くなった。おそらく、私のようなアラフォー世代以上の和歌山県出身者にとって、「箕島」という言葉は、ただの校名以上の意味を持っている。それは思…

『イングリッシュ・モンスターの最強英語術』菊池健彦(集英社)

→紀伊國屋書店で購入 「貧乏と英語」 大学受験がこれほどのニュースになったのは久しぶりのことだろう。かつて津田塾大学で、女子高生に扮したお父さんが娘の替え玉として受験しようとして試験会場でばれるという、知る人ぞ知るスゴイ事件があったが(「父と…

『パル判事-インド・ナショナリズムと東京裁判』中里成章(岩波新書)

→紀伊國屋書店で購入 著者、中里成章は、ベンガル史研究者である。日本と縁の深い3人のインド人(ラシュ・ビハリ・ボース、スバス・チャンドラ・ボース、ラダビノド・パル)はいずれもベンガル人で、「三人とも日本の右寄りの論者のお気に入りの人物であり、…

『モノ言う中国人』西本 紫乃(集英社)

→紀伊國屋書店で購入 「中国のインターネット言論についての優れた入門書」 チュニジアやエジプトでの動乱で、ツイッターやフェイスブックによるネットワーキングが大きな機能を果たしたことはよく指摘されている。しかしむろん、こうしたツールがあればすぐ…

『池田学画集1』池田 学(羽鳥書店)

→紀伊國屋書店で購入 「ジャケ買い」や「装丁買い」といった言葉がある。作者や作品の内容ではなく、見た目のデザインに惹かれて思わずCDや本を買ってしまう、というものだ。それらとよく似たもので私がついついやってしまうのが、本の「印刷買い」である。…

『哲学への権利』西山雄二(勁草書房)

→紀伊國屋書店で購入 「終わりなき学問」 「脱構築とは制度という概念がつねに問題となる制度的実践である」―ジャック・デリダ こう聞くと、「ああもう無理。哲学は難しい。何のこっちゃ分からない。」と拒絶反応を示してしまう人が多いと思う。私もその一人…

『近代日本の「手芸」とジェンダー』山崎明子(世織書房)

→紀伊國屋書店で購入 手芸、このドメスティックかつ趣味的な制作行為は、この不景気の世の中でも(いや、不景気だからこそというべきか)、いっこうに廃れることのない女性の活動ジャンルだ。手芸教本は手をかえ品をかえて出されつづけているし、手芸用品の…

ただいま準備中

La littérature est une explosion! coming soon...

『歩いて見た太平洋戦争の島々』安島太佳由著、吉田裕監修(岩波ジュニア新書)

→紀伊國屋書店で購入 本書は、岩波ジュニア新書『日本の戦跡を見る』(2003年)の続編である。同時に出版された写真集『消滅する戦跡-太平洋戦争激戦の島々』(窓社)をあわせて見ると、よりリアルに著者、安島太佳由の言わんとすることが伝わってくる。著…