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プロの読み手による書評ブログ

2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ぶんぱく'11 人気パビリオン第一週

皆様長らくお待たせ致しました! 4月1日の実行委員長T.Pによる開会宣言と共に幕を開けた「ぶんぱく'11~La littérature est une explosion!~」。揃えたパビリオンは総計40。その中で集客力のあるパビリオンをご紹介いたします。あれ?この流れ昨年のワール…

『ゴヤ』堀田善衞(集英社)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「混乱と崩壊のなかで「見る」こと」 東日本大震災からひと月たった。この間ずっと堀田善衞『ゴヤ』を読んでいた。読みはじめたのは震災前の3月初め。寝酒ならぬ寝読みで…

『ローマ皇帝ハドリアヌスとの建築的対話』伊藤哲夫(井上書院)

→紀伊國屋書店で購入 「フマニタスとしての建築」 現代日本は建築大国である。古代以来の伝統建築の分厚い蓄積と、ライト、レーモンド、タウト、コルビュジエらに導かれて近代建築をわがものとしてきた実績。この二柱に支えられて、今日、安藤忠雄、伊東豊雄…

『おとなの味』平松洋子(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 大人の味といえば、苦みや辛みやえぐみ。大人になってはじめて知るおいしさは、誰にでも思い当たるはず。ここにも、子どものころはむしろ遠ざけていた山菜を切実に欲する人がいる。 春先に野山の苦み、えぐみを味わう。すると、にわかに…

『アナトリア』鬼海弘雄(クレヴィス)

→紀伊國屋書店で購入 「失われたあらゆるものへの懐かしさを未来へ」 1994年から15年の間に6度、秋から冬にかけて訪れたアナトリア大地(トルコ)で撮影した140点が並ぶ。一度の滞在は6〜8週間で、写真家は首都イスタンブールから乗り合いバスなどで地方に出…

『切りとれ、あの祈る手を──〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』佐々木中(河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 「「本を読むこと」の恐ろしさ」 佐々木中氏の語り下ろし作品、『切りとれ、あの祈る手を──〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』を読もうと思ったきっかけは、この2月に「ビブリオバトル with キノベス」というイベントに参加したこと…

リーフレットその2

パビリオンにつづき、こちらは海外文学博覧会と日本文学博覧会の書籍リストです。 ぶんぱく'11リーフレット 海外/日本文学博覧会編 ファイルをダウンロード ※印刷する場合は、B4サイズ用紙がおすすめです リーフレットは店頭でも無料配布しております。リー…

リーフレットその1

今回は店頭でも配布している書籍リスト掲載リーフレットを、PDFファイルで公開させていただきます。 遠方にお住まいでご来店いただけない方も、リストだけでもたのしんでいただければ幸いです。 ぶんぱく'11リーフレット パビリオン編 ファイルをダウンロード…

『歴史語りの人類学-複数の過去を生きるインドネシア東部の小地域社会』山口裕子(世界思想社)

→紀伊國屋書店で購入 実証的文献史学を中心とする近代歴史学は、国民国家の制度や文化の形成・発展に寄与し、国民意識を高めるのに貢献した。つまり、近代の歴史叙述は、おもに国民を読者対象とした。したがって、世界史は各国史の寄せ集めで、たとえば山川…

『摘録 断腸亭日乗(下)』永井荷風(岩波文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「永井荷風の被災日記」 鬱々とした日々が続いている。大震災直後には閃光のように現れたかのように思えた、被災者同士の相互扶助的な「災害ユートピア」が、企業とメディアを中心とした抑圧的で官僚的な「自粛」ムードによってかき消さ…

ぶんぱく会場風景

いよいよ開幕した「ぶんぱく'11」 今回はその会場風景をご紹介します。 会場にかかる看板。 下から写してみる まず、正面に日本文学があり、 その裏には海外文学。 アクセントで「ぶんぱく'11」オリジナルTシャツもキラリ! そして、その奥に聳えるパビリオ…

開会宣言

「文学博覧会 ぶんぱく'11」開会宣言 文学博覧会。それは我々人類の、言葉の軌跡と滾々と湧き出る想像力の可能性とを一堂に集結させた、果てない空間である。言葉を獲得した人類は、言葉によって歓び、怒り、悲しみ、闘い、慰められてきた。しかし一方では、…

『ポスターを貼って生きてきた―就職もせず何も考えない作戦で人に馬鹿にされても平気で生きていく論』笹目浩之(PARCO出版)

→紀伊國屋書店で購入 「<劇評家の作業日誌>(54)」 おもしろい人間がいたものだ。“おもしろい”という言い方が乱暴なら、“よくぞこんな風に生きてきた人間がいたものだ”と言い換えてもいい。誰も考えもしなかったことを思いつき、後先考えず大胆に実行し…

『歌う国民 唱歌、校歌、うたごえ』渡辺裕(中公新書)

→紀伊國屋書店で購入 小学校の入学式の日、教室で「みんなのうた」という新書本ほどのサイズのオレンジ色の本を配られた。それまでには手にしたことのない、小ぶりで文字も小さな本だったので、とても大人っぽいものに思えてうれしかったのをおぼえている。 …

『都市の歴史的形成と文化創造力』大阪市立大学都市文化研究センター編(清文堂)

→紀伊國屋書店で購入 今日は、4月1日である。多少のおふざけは許されるようだが、悪い冗談はやめたほうがいい。これから書くことは冗談ではないのだが、人によっては「悪い冗談はやめてくれ!」と歴史教育に不信を感じる人がいるかもしれない。すくなくとも…

『ビリジアン』柴崎友香(毎日新聞社)

→紀伊國屋書店で購入 「口の中がざらざらする小説」 夕陽と川べりと工場街を背景にした静かな世界である。だが、癒し系とも違う。セピア色の〝昭和〟な感傷にひたりたくなるが、それも違う。どこかピリピリしたものがある。 『ビリジアン』は掌編を20ほど…