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プロの読み手による書評ブログ

『TOKYO YEAR ZERO』David Peace【著】酒井武志【訳】(文藝春秋)

TOKYO YEAR ZERO

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「予定日は12頁」

 実は今の車にする前はT社のSupraでした。

 高速に入った時のスポーツシートに押し付けられる加速といい、低い車高で路面を捕らえる太い足まわりといい、そしてボディに伝わる吹き上がるエンジン音といい、かなりのお気に入りで、7年に1度のフルモデルチェンジからして、今の4ドアからまたSupraの2シーターに戻る時は7の倍数年後の第何世代のモデルかと考えていた矢先、生産中止になってしまいました。

 ダラダラとした環八はちょうどブルースインプロビゼーションで、上野毛を過ぎて第3京浜に入ったところで、待ってましたとばかりに元のハードなリフに戻り、続いてMoby Dickに入ると、もうゼロヨンかドラッグレースの感覚でパラシュートが開く直前の感じで、このまま逝けたらどんなに楽かと思う。この車から観る風景がそのままPV(プロモーションビデオ)になってくれるとアドレナリンが出る感じで、そんな一般向けの表現がイヤになる時にはアクセルを踏み抜きそうで気をつけなければいけない。

 武道館で初めてJohn Bonhamを観た時には、こういうドラムソロというカテゴリを知らない私をはじめその他多くの日本人は「何だこれ?」と思いましたが、もしかして世の中はもっと先に進んでいたのかもしれないと開眼したのかもしれない瞬間でした。

 LeedsでStonesを観た時も、もしかしてStonesはCharlie Wattsかもしれないと思いましたし、今やGenesisPhil Collinsですが、Peter Gabrielの頃のGenesisPhil Collinsではありませんでしたが、変則リズムは既にPhil Collinsかもしれないと思いました。

  1. Nine Inch Nails (2000@東京ベイNKホール)

   30年かかって辿り着いた究極のロックの結論

  2. Led Zeppelin (1971@武道館)

   私の人生はここに始まる

  3. Roy Buchanan (1977@後楽園ホール)

   問答無用、ギターマニア感涙のライブ

  4. Genesis (1981@Birmingham)

   終了後、雪が降り始めた、伝説のクリスマスライブ

  5. Rolling Stones (1982@Leeds)

   伝説のユーロツアー最終公演野外ライブ、それも追加公演

 これは今現在の私の中でのベストライブトップ5です。

 それぞれのオフィシャルとブートレグな音源と映像が残っていますし、いるはずです。想えば私の人生の大半は、体内の水のように、ロックで出来ているということです。

  1. Still (Nine Inch Nails)

   銀座〜浜崎橋から11号レインボウブリッジ〜羽田に向う早朝、朝もや

  2. Endless Story St Valentine's Acoustic Live (伊藤由奈)

   深夜の246上り、玉川高島屋〜瀬田に向う多摩川を渡るあたり

  3. Spiral or Time Control (上原ひろみ)

   5号上り、東の空が明るくなり始めた早朝

  4. Beyond Boundaries (Michael Hedges)

   2号上り深夜東京タワーのライトアップから六本木に抜けて

  5. Official Bootleg USA '06 (Jeff Beck)

   1号羽田線羽田空港から湾岸に出ず都心に向う空き始めた23時台

   (時にFreeかBad Companyでも代用可)

  6. Cinnamon III (Cinnamon)

   環八から第3京浜ないしは東名に入る渋滞後

 これは今現在の私の車の中に入っている6CDsです。

 それぞれの時空間に合わせて、それなりの音量で聴いていますし、いるはずです。想えば私の人生の要所は、この車から観る風景と、この耳で聴く音圧で出来ているということです。

 時に、いわゆるジャケ買い、ジャケット(外装)を見ただけで買うという衝動買いとも若干違う、自分の第6感を信じる時があります。成功例は、例えばレーザーディスク時代の「ファーゴ」ですが、コーエン兄弟とも知らず、でもジャケットらしい映画で嬉しいものでした。書評で言うと夏木マリさんの「81-1」でしょうか。

 音楽系でのジャケ買いというのは、ジャケ買いと言うより店に流れている曲を聴いて、アレッと思ったものになります。

 「こいつニールヤングみたいな弾き方するなあ」と思い「今流れているCD下さい」と手に入れたのが山崎まさよしでした。ジョンメイヤーもそんな感じでした。こいつら実はギター上手いわ、と。

 それより購読欲をそそるのは雑誌で、一時期は、Led Zeppelinとか書いてあったら何でも買っていた時期があります。Jimmy Pageとか言われた日には兎に角買わざるを得ないでしょう。

 中学の時、授業で「では12頁を開けて」とか言われて、自分の頭の中では「じゅうにぺいじ、じゅにーぺーじ、じみーぺーじ」とか思って一人でうけていました。その頃です、stand-up comedyをやりたいと思ったのは(boo)そしてlate showの司会者になりたいと思ったのは(boo)。その頃です、中学の文化祭でギターをアルコ(バイオリンの弓)で弾いて、観客に引かれてしまったのは(boo)。

 今となってみればYear Zeroとか言われた日には兎に角買わざるを得ないでしょう。

 モーターショウでGTRとFT-HS、つまりはSupra復活とのことで(でもやや小振り?)7の倍数は忘れ、次はFT-HSで6CDsをそれなりの音量で聴きながら久々に深夜〜早朝の首都高を回してみたいところです。実はもうスピードはいいんです。その2シーター感だけでいいんです。そうすると、そのハンドルを握る左腕はJimmy Pageになって、左ひじと左肩を前に突き出しながらになって、でもテルミンの時は、両手を離さないように気をつけなければいけない。

It's been a long time since I rock and rolled

It's been a long time since I did the stroll

Let me get it back, let me get it back

Let me get it back where I come from


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