書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『ハルーンとお話の海』サルマン・ラシュディ(国書刊行会)

→紀伊國屋書店で購入 「物語る力を解放せよ!」 今回取り上げる選手はインド代表の『ハルーンとお話の海』。著者は二十世紀を騒がせた本として有名な『悪魔の詩』を書いたサルマン・ラシュディである。外国文学を多少なりとも好きな人は知っていると思うが、…

『大人のための国語教科書 ― あの名作の〝アブない〟読み方!―』小森陽一(角川書店)

→紀伊國屋書店で購入 「国語を去勢する」 なかなか読みでのある新書である。思わず線を引いたりコメントを書きこんだりしてしまう。取り上げられるのは、漱石の『こころ』、鴎外の『舞姫』、芥川の「羅生門」など国語教科書の〝定番〟。これらが高校国語教育…

ブックレット完成!

おや? おやおやおや? あ! ワールド文学カップのブックレットだ!! おおー。 取り上げる650点の文学全点の推薦コメントを掲載した、 数量限定ブックレットが完成致しました。 全部でなんと64ページ! 4月1日よりフェア会場にて無料配布致します。 ご期待…

『近頃の若者はなぜダメなのか―携帯世代と「新村社会」』原田曜平(光文社新書)

→紀伊國屋書店で購入 「〈若者論〉自体を問い直すきっかけに」 新刊を見つけても、評価がある程度定まってからでなければ触手が伸びないジャンルが二つある。若者がいかに変わったか、さらにはいかにだめになったかを論じる「若者論」と、メディアやメディア…

『昼が夜に負うもの』ヤスミナ・カドラ(早川書房)

→紀伊國屋書店で購入 「とうとう書かれたアルジェリアの物語」 今回採り上げるのはアルジェリア代表として参戦したヤスミナ・カドラ。アルジェリアの文学を誰かに代表させようとすると、どんな作家であれどうしてもカミュより先に名前を挙げることはできなく…

『ホフマンと乱歩 人形と光学器械のエロス』平野 嘉彦(みすず書房)

→紀伊國屋書店で購入 「二つの近代」 ホフマンの「砂男」は、さまざまなトリックが満ちていて、分析するのが楽しみだ。おまけと言ってはなんだが、フロイトの優れた分析があって、ホフマンの側からみても、フロイトの側からみても、分析しがいのある作品だ。…

ピクウィック座談会(後編)

後編のテーマとなるのは残る二つのセクション、 「往年の名選手たち」と「日本文学代表選抜会」。 こちらは「ワールド文学カップ」とは異なり、 文庫本に限定してそれぞれ156冊を選び出したセクションです。 その選書にまつわる秘話の数々を、 ピクウィック…

『在郷軍人会-良兵良民から赤紙・玉砕へ』藤井忠俊(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「矛盾に満ちた在郷軍人会の全貌を描き出す」。著者、藤井忠俊は、すでに『国防婦人会-日の丸とカッポウ着』(岩波書店、1985年)や『兵たちの戦争-手紙・日記・体験記を読み解く』(朝日選書、2000年)などの著書があり、民衆の視点…

『Portrait of a Killer : Jack the Ripper - Case Closed 』Patricia Cornwell(Berkley)

→紀伊國屋書店で購入 「パトリシア・コーンウェルの力作ノンフィクション」 取材や調査に400万ドルとも600万ドルともいわれる物凄い費用をかけたノンフィクション。 お金を出したのはもちろん著者のパトリシア・コーンウェル自身だ。コーンウェルは、…

ピクウィック座談会(前編)

4月1日開始の第二回フェア、その選書内容公開に先駆けて、 次回フェアについてメンバーで語った座談会を敢行致しました。 今度のフェアは、「ワールド文学カップ」、「往年の名選手たち」、 「日本文学代表選抜会」と大きく三つのセクションに分かれており、…

『自転車ぎこぎこ』伊藤礼著(平凡社)

→紀伊國屋書店で購入 「伊藤礼氏の自転車生活とその意見」 4度目の年男となった今年から自転車通勤を始めた。片道50分、信号の待ち時間を含めて1時間弱の道程である。 会社の後輩から勝間和代でも読んだんですかと尋ねられた。有効に時間を使うことを提案…