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プロの読み手による書評ブログ

根井雅弘

『「ゆるく生きたい」若者たち 彼らはなぜ本気になれないのか?』榎本博明 立花薫(廣済堂出版)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「「ゆるく生きたい」とは何か?」 本書(榎木博明・立花薫『「ゆるく生きたい」若者たち―彼らはなぜ本気になれないのか?』廣済堂新書、2013年)は、心理学の専門家二人が「ゆるく生きたい」という最近の若者たちについて考察…

『アベノミクスは何をもたらすか』高橋伸彰 水野和夫(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「アベノミクスは日本を救うのか」 先日の参議院選挙での自民党圧勝によって「アベノミクス」は信任されたのだろうか。勝ったほうは当然そう吹聴するだろうが、アベノミクスの内容をめぐっては、専門家の間でも意見が分かれるの…

『エーリヒ・クライバー 信念の指揮者 その生涯』ジョン・ラッセル(アルファベータ)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「信念を貫いた指揮者の生涯」 ウィーン生まれの名指揮者エーリヒ・クライバー(1890-1956)は、いまでは、カルロス・クライバー(1930-2004)の父親として触れられることが多いが、生前はベルリン・シュターツオーパーの音楽総監督…

『日本経済の憂鬱―デフレ不況の政治経済学』佐和隆光(ダイヤモンド社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「経済学者の批判精神」 佐和隆光氏(滋賀大学学長)の新刊(『日本経済の憂鬱』ダイヤモンド社、2013年)を久しぶりに手にとった。学長職は激務である。京都大学教授時代は年に数冊の本が出ていたが、さすがに最近はあまり本を…

『「坂本龍馬」の誕生 船中八策と坂崎柴瀾』千野文哉(人文書院)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「龍馬「船中八策」の謎に挑む」 坂本龍馬は幕末維新史のなかで最も人気の高い人物のひとりと言ってもよいだろう。司馬遼太郎の歴史小説『竜馬がゆく』(1963-66年)が龍馬人気の定着に大きく貢献したことも今日では周知の事実だ…

『早稲田1968―団塊の世代に生まれて』三田誠広(廣済堂書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「学生運動、挫折、それでも文学に生きる」 団塊の世代が学生運動を回顧するのはつねにある種のためらいや痛みが伴うものだ。本書(『早稲田1968―団塊の世代に生まれて』廣済堂新書、2013年)の著者、作家の三田誠広氏があ…

『<三越>をつくったサムライ 日比翁助』林洋海(現代書館)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「三越ブランディングをつくった久留米武士」 タイトルに惹かれて本書(『<三越>をつくったサムライ 日比翁助』現代書館、2013年)を手にとったが、「三越ブランディング」を創り上げるのに尽力した久留米武士、日比翁助(1860…

『愛国心』清水幾太郎(筑摩書房)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「民主主義による愛国心の合理化は可能か」 本書(清水幾太郎著『愛国心』ちくま学芸文庫、2013年)は、1950年に出版された岩波新書の文庫化である。復刊の経緯は知らない。著者の清水幾太郎(1907-88)は、当時「岩波文化人」とし…

『ヴェルディ―オペラ変革者の素顔と作品』加藤浩子(平凡社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「神話や伝説に覆い隠された大オペラ作曲家の実像」 今年は、ワーグナーとヴェルディの生誕200年に当たっており、世界中のオペラ劇場がこの二人の偉大な作曲家の作品を上演中である(注1)。いや、生誕200年でなくとも、ワーグナ…

『新自由主義の帰結』服部茂幸(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「”新自由主義" への戦闘宣言」 著者(服部茂幸氏)はポスト・ケインズ派経済学の研究や最近の量的緩和政策批判などで極めて精力的な活動を続けている経済学者だが、本書(『新自由主義の帰結―なぜ世界経済は停滞するのか』岩波新…

『ケネー 経済表』ケネー(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「経済学の真の天才の作品」 フランソワ・ケネー(1694-1774)の『経済表』が岩波文庫に収録された(『ケネー 経済表』平田清明・井上泰夫訳、岩波文庫、2013年)。喜ぶべきことである。なんとなればケネーは経済学の創設期を飾る…

『ヴォルガのドイツ人女性アンナ―世界大戦・革命・飢餓・国外脱出』鈴木健夫(彩流社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ヴォルガ・ドイツ人女性の苦難の物語」 本書(鈴木健夫著『ヴォルガのドイツ人女性アンナ--世界大戦・革命・飢餓・国外脱出』彩流社、2013年)の主人公アンナ・ヤウク(1889-1974)は、ロシア・ヴォルガ地方のドイツ人移民の…

『ヨーゼフ・ラスカと宝塚交響楽団』根岸一美(大阪大学出版会)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 ヨーゼフ・ラスカ(1886-1964)という名前を聞いて、一体どれくらいの人がどんな人物だったか、知っているだろうか。本書(『ヨーゼフ・ラスカと宝塚交響楽団』大阪大学出版会、2012年)は、ブルックナー研究家としても知られる…

『ハイエク 「保守」との訣別』楠茂樹 楠美佐子(中央公論新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ハイエク社会哲学への招待」 ハイエクは現代経済思想史においてケインズとともに最も有名な名前のひとつだが、彼の思想は経済学というよりは社会哲学全般にまで及ぶ広さをもっている。一昔前は、ハイエクよりもケインズのほう…

『ゲーム理論と共に生きて』鈴木光男(ミネルヴァ書房)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ゲーム理論にかけた人生」 ゲーム理論はいまや経済学に限らず他の社会科学や自然科学でも広く使われるようになっているが、本書(『ゲーム理論と共に生きて』ミネルヴァ書房、2013年)の著者(鈴木光男・東京工業大学名誉教授…

『フルトヴェングラーと私-ユピテルとの邂逅』ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 「大声楽家、大指揮者を語る」 大指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)の名前をタイトルに含む本がどれほどあるか知らないが、私自身が過去に新聞や雑誌に取り上げた本だけでも最低4-5冊はあるはずだから、わが国にもいま…

『デフレーション』吉川洋(日本経済新聞出版社)

→紀伊國屋書店で購入 「デフレをどう捉えるか」 経済学はアダム・スミスの昔から優れて実践的な学問であったが、バブル崩壊後の日本経済が長いあいだ低迷し続けるうちに「デフレからの脱却」という課題が急浮上するようになった。だが、経済学者やエコノミス…

『小商いのすすめ―「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』平川克美(ミシマ社)

→紀伊國屋書店で購入 「経済成長」と「縮小均衡」 私は1960年代から70年代の初めにかけて10歳までの子供時代を過ごした世代なので、まさに高度経済成長時代の申し子といってもよい。一昨年、総合雑誌『中央公論』が「私が選ぶ『昭和の言葉』」という特集を組ん…