書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

田家秀樹 「新宿と音楽」

新宿はいつの時代も新しい音楽を送り出してきた。 それぞれの世代にとって、新宿で聞いた音楽というのが青春のBGMとして残り続けているのだと思う。 例えば、60年代に新宿で過ごしていた人たちにとってはモダンジャズが、そういう音楽に当たるのだろう…

『秋の四重奏』バーバラ・ピム著、小野寺健訳(みすず書房)

→紀伊國屋書店で購入 「自分の人生と同じような人生を映した小説」 この小説は、退職を間近にした、60ちょっとすぎぐらいの男2人と女2人、合計4人が主人公の物語である。人生の秋を迎えた者たちが奏でる四重奏。それがこの作品の題名の由来である。 小説…

中平穂積 インタビュー

DIGのオープンは1961年の11月でした。店を出したのは、二幸という三越が経営している食料品デパートの裏でした。今のスタジオアルタの場所です。その路地裏に今でもあるアカシアと言うロールキャベツの店の三階でした。でDIGを閉めたのが1982年です。消防法…

吉田豪 エッセイ

新宿といって真っ先に思い出すのはメジャーデビュー前のSIONなんですよね。新宿西口ガード下(現・さくらや新宿西口駅前店の辺り)にあったミリタリー&ロック・ショップの店員で、新宿の路上で酔っ払ってよく野宿して、自主盤『新宿の片隅から』が紀伊國屋…

菊地成孔 エッセイ

1979年、16歳の時に初めて一人で新宿に来たとき、僕はもう舞い上がってしまって、 何が何だか解らなく成りました。新宿駅、風月堂、ゴールデン街、花園神社、伊勢丹、 三平ストア、カメラのさくらや、JUN、ピットイン、伝説のジャズ喫茶たち。アルタは未だ竣…

『草食系男子の恋愛学』 森岡正博(メディアファクトリー)

→紀伊國屋書店で購入 「暗い青春を送るあなたのために」 生命学の提唱者である森岡さんの著書をいくつか立て続けに読んだのは確か2000年ごろだったが、私は森岡さんが挑むのは生命倫理ではなくて、生命の哲学なのだとわかって嬉しかった。それは生命の良し悪…

森山大道 「新宿は……」(抜粋)

新宿という都市は、もうかれこれ四十年近くもこの街とつき合ってきたぼくにしていまだにエタイの知れない場所である。そこに身を置き目の当りにしながら、新宿はそのつど、あたかもヌエのように正体をくらまし、迷路にまよい込んだごとくぼくの心の遠近法を…

『Action/Abstraction: Pollock, De Kooning, and American Art, 1940-1976 (Jewish Museum)』Norman L. Kleeblatt(Yale University Press)

→紀伊國屋書店で購入 「ユダヤは抽象する?」 ニューヨーク五番街のユダヤ博物館で、抽象画の特別展が開かれている(Action/Abstraction: Pollock, de Kooning, and American Art, 1940-1976. 9月21日まで)。 ニューヨークで抽象表現派というと、今さら…

『ヨーロッパの庭園―美の楽園をめぐる旅』岩切 正介(中央公論新社)

→紀伊國屋書店で購入 。。。王はよくみて感心し、内心怒った。すべてが王のもつものを越えていた。それは本来、王にこそふさわしいものであった。王は嫉妬で苦しみ、怒りでのどがつまりそうであった。(本書92頁) 太陽王に嫉妬される機会などそうそうあるも…

平沢剛 エッセイ

1960年代の映画を研究している私にとって、新宿は特別な意味を持つ場所である。新宿という街を舞台に、1960~70年代に様々な傑作が生みだされているからだ。 しかし、ここで重要なのは、優れた作品や作家を称揚するのではなく、新宿という街そのものが、そう…

若松孝二 インタビュー

映画監督としての自分の原点は、やっぱり新宿という町にあります。 その象徴が、蠍座であり、『天使の恍惚』であり。『天使の恍惚』は、新宿の交番テロのシーンなんかに、商店街が上映反対と騒いで、封切り一日でだめになっちゃったけれども。今回の新作『実…

『科学者として生き残る方法』フェデリコ・ロージ、テューダー・ジョンストン(著)、高橋さきの(訳)(日経BP社)

→紀伊國屋書店で購入 小学校・中学校・高校の先生になるためには、それなりの教育を受け実習もこなして、教職免許を取らなければならない。そのような関門があることは、煩わしいかもしれないが、先生になるために何をすればよいかが明確で、目標に向かって…

『男の隠れ家を持ってみた』北尾トロ(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「ちいさな変化の大切さに気づく時」 結婚してから、既婚者の手によるほのぼのしたエッセイが気にかかるようになりました。大きな心境の変化です。独身のときは、同じように独身生活をしている人の書いたものにリアリティを感じていてい…

書店の中にある劇場、紀伊國屋ホールを知る5つのポイント

談 : 紀伊國屋ホール/サザンシアター総支配人・金子和一郎 紀伊國屋ホール前支配人・鈴木由美子 1) 紀伊國屋ホールの誕生と紀伊國屋演劇賞の創設 東京オリンピックが開催された1964(昭和39)年。前川國男の設計で新築された紀伊國屋ビル(地上9階・地下2…

『百』色川武大(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「孤独の共犯」 本書は、「連笑」「ぼくの猿 ぼくの猫」「百」「永日」の四つの作品を収めた作品集である。川端康成文学賞を受賞した「百」を銘打っての一冊で、この意表を突いた題名は、父親の届かんとする年齢を意味している。 色川武…

横内謙介 エッセイ

約30年前、先輩に連れられてぎっしりとお客が詰まった通路に体育座りして、つかこうへい事務所の「熱海殺人事件」を観た。当時、厚木の高校生だった私にとって、放課後に詰め襟姿のまま小田急に乗って大きな河を二つ越え、新宿に行くこと自体が決死の大冒…

『疑似科学入門』池内了(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 わたしたちは、科学とどうつきあっていけばいいのか。本書を読んで、あらためて自問した。その答えは、わからなかった。 科学的説明を聞いて合理的に理解できて安心する反面、わたしたちは非合理的なことで生活の潤いを得ている。たとえ…

マキノノゾミ 「思い出。少々無法な。」

学生の頃、京都から窮屈な夜行バスに乗って、何度も紀伊国屋ホールに来ました。つかこうへい事務所の公演を、朝一番から当日券に並んで観るためです。もう時効だと思うので書きますが、観るだけでなく、客席でこっそりとカセットテープを回したりもしました…