書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

川口有美子

『〈病〉のスペクタクル 生権力の政治学』 美馬達哉(人文書院)

→紀伊國屋書店で購入 「「健康」は義務なのか?」 今回も神経内科医が書いた本を紹介する。 著者の美馬先生とは先日、某書店が企画したイベントで久しぶりにお会いしてその後、飲みに行ったが、正面に座られた美馬さんのステキなネクタイ、よく見ればアニメ…

『ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足――神経内科からみた20世紀』 小長谷正明(中公新書)

→紀伊國屋書店で購入 「多彩な著名人の病状から歴史を診断する」 医者の書いた本がしばらく続く予定である。今回は神経内科医。 著者の小長谷正明氏の医学論文は、私でさえいくつかは存じ上げていたのだが、著者みずから、あとがきで「今回はさまざまな考え…

『医療立国論―崩壊する医療制度に歯止めをかける!』 大村昭人(日刊工業新聞社)

→紀伊國屋書店で購入 書名の『医療立国論』は、いわずもがな『医療亡国論』に向けて一石投じてやろうという著者の意気込みを端的に表している。著者の大村昭人氏は、巻末の履歴によれば、帝京大学医学部名誉教授で、現在も医療技術学部臨床検査科で教鞭もと…

『生きることを学ぶ、終に』 ジャック・デリダ[著] 鵜飼哲[訳] (みすず書房)

→紀伊國屋書店で購入 デリダを読み、「生き残り」をどう生きるか考えよう. 都内は先週、記録的猛暑で最高気温を更新したが、昨日も、そして明日もあさっても、私はALSの人たちの付き添い(目撃者として)である。彼らの生き方は真夏も真冬も関係ない。む…

『変身-カフカ・コレクション』 フランツ・カフカ[著] 池内紀[訳] (白水Uブックス)

→紀伊國屋書店で購入 「カフカ、『変身』に見られる家族の自立」 夏休みといえば宿題、宿題といえば感想文だが、久しぶりに手に取った『変身』は多様な読み方ができる稀有な小説であった。 『変身』は、高校時代に読んだきりだから、内容も漠然としか覚えて…

『夜のミッキーマウス』谷川俊太郎(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「おとなになってから出会える詩もある」 またしても谷川俊太郎さんの詩だ。 私は谷川さんの詩がよほど好きなのだ。 谷川さんにはまだお会いしたことはないけど こんな風なラブレターをあちこちに書いていれば、 きっといつか逢えるだろ…

『研究計画書の考え方 大学院を目指す人のために』 妹尾堅一郎(ダイヤモンド社)

→紀伊國屋書店で購入 「論文を書いたことがない人にも、分かりやすく丁寧な解説書」 まずは、日本電子出版協会(JEPA)第一回電子出版賞の部門賞、 オリジナル・サービス賞の受賞を祝って。 《書評空間》のスタッフの皆さん、そして評者の先生方、 おめでと…

『折れない葦  医療と福祉のはざまで生きる』 京都新聞取材班(京都新聞出版センター)

→紀伊國屋書店で購入 「2006年度 日本新聞協会賞受賞」 インターネット配信などもあり、 情報は常に過剰供給で身辺で氾濫している。 だから、知りたくもないようなことも知らされるので、 悪いニュースに溺れるような気もしないでもない。 でも、社会の…

『マドンナの首飾り-橋本みさお、ALSという生き方』山崎摩耶(中央法規)

→紀伊國屋書店で購入 「マヤヤが書いたみさおの本」 前回の続きで、真っ当なジャーナリストの書いた本を 取り上げようと思ってた矢先、 今朝ダウンロードしたe-mailで、がくっと力が抜けた。 さくら倶楽部より宴の御案内 入梅前夜、皆様にはお変わりありませ…

『何も起こりはしなかった』ハロルド・ピンター[著]喜志哲雄[編訳](集英社新書)

→紀伊國屋書店で購入 「自由民主主義の名の下の人権侵害と言語の危機」 今ほど、わが国の患者の自由が脅かされていることは過去なかった。 しかし、たぶんこのような私たちの危機感も、恒常化すれば議論にすらならなくなるにちがいない。 日本の医療もやがて…

『香水―ある人殺しの物語』 パトリック・ジュースキント (文春文庫)

→紀伊國屋書店で購入 つい先ごろ、「パフューム ある人殺しの物語」という映画が、日本に上陸した。あちこちのブログで紹介されていたので、たぶんまだどこかで上映しているだろうと思っているうちに、時が経ってしまったのだが。 本書はその原作。映画もベ…

『レヴィナス―何のために生きるのか』小泉義之(NHK出版)

→紀伊國屋書店で購入 何のために生きるのか。 答えは意外にシンプルだ。 だが、そのような、本書に書かれたままが、 レヴィナスの本意かどうかはわからない。 ここに描かれたのは、レヴィナスの言葉を借りた 小泉先生による「他者論」と思われる。 小泉先生…

『写真ノ中ノ空』 谷川俊太郎=詩、荒木経惟=写真 (アートン)

→紀伊國屋書店で購入 10日、東京八重洲の某所に国公立病院と主要な私立病院から神経内科医が集まっていた。 障害者自立支援法と医療制度改革とが病院経営に、ひいては難病患者の生活や意思決定にどのような影響を及ぼすのか、各地の情報を交換し今後の対策…