書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2008-01-01から1年間の記事一覧

『この国の経済常識はウソばかり』トラスト立木(洋泉社)

→紀伊國屋書店で購入 「現実の直視するために、いったん経済常識を捨てて、本書を読むべし」 アメリカ発の金融危機がすさまじいスピードで拡大しています。 「金融危機が加速している」と書いてもなんのことやら分かりません。 「アメリカ発の金融危機の影響…

『フランシス・F・コッポラ』村上龍、他(エスクァイアマガジンジャパン)

→紀伊國屋書店で購入 「私はただ単に忙しくしているだけで何も達成していない気がしてならない しかし今なら「地獄の黙示録」の映画評をもっと上手く書ける気がする」 私の顔写真がある機関誌に載って、それもプロのカメラマンが何十枚と撮って、その中から…

『小銭をかぞえる』西村賢太著(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 「劇画時代の私小説」 「私小説界の救世主」などとも言われる西村賢太については、この「書評空間」でも阿部公彦氏がこの作家の本質を見事に切り取っているので、筆者が屋上屋を架す必要はないような気がした。ただ、西村については、芥…

『McMafia』Misha Glenny(Alfred a Knopf)

→紀伊國屋書店で購入 「裏社会の経済グローバル化」 ニューヨークにいる僕のところに時々おかしなメールが送られてくる。送り主はアフリカに住むという人からだ。彼あるいは彼女は、アフリカの大富豪または王の息子や妻ということだ。最近父または夫が死んで…

『乱視読者の英米短篇講義』若島正(研究社)

→紀伊國屋書店で購入 「明晰な情事」 大学生にお薦めの批評入門第二弾。文学とのお付き合いの方法がわからないという人には、是非手にとってもらいたい一冊である。いわば恋愛指南の書。 著者はこの何十年、文学という異性とさまざまな形で付き合ってきた。…

『コドモダマシ-ほろ苦教育劇場』パオロ・マッツァリーノ(春秋社)

→紀伊國屋書店で購入 「まあ、まんず、一杯。」 「反社会学講座」でノックダウンされている私は、 店頭でこの本を迷いなく手に取りました。 正直言うと、ちょっぴり読むのが怖い気持ち。 だって、だって、なんたって、「コドモダマシ」。 どんな痛いことが書…

『時が滲む朝』楊逸(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 「故郷とは?」 パリには外国人が多い。そして、パリで活躍する外国人も多い。天安門事件の頃、中国から亡命してきた若きリーダーもいた。早熟の才能を持ち活躍する中国人作家シャン・サもいる。その頃はシャイヨー宮から程近い所に住ん…

書を持て、街へ出よう! ― リトルマガジン「街から」入荷!

リトルマガジン「街から」(街から舎)が入荷いたしました! 当フェアの小冊子にもご寄稿いただいている本間健彦さんが編集&発行されているミニコミ誌です。 街の細い路地に分け入っていくかのような、わくわくするトピックが盛り沢山の誌面。 一般の書店で…

『狩猟と編み籠―対称性人類学〈2〉』中沢新一(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 宗教なかんずくキリスト教と映画の類似性を考察する書物であるが、そうした題材としてなら誰しも思いつく定番名画のいくつか<「十戒」(デミル)、「奇跡の丘」(パゾリーニ)、「ラルジャン」(ブレッソン)>に続いて、おこちゃま映…

『ECDIARY』 ECD著 (レディメイド・インタ-ナショナル)

→紀伊國屋書店で購入 「あるラッパーの思想と行動」 1979年、ニューヨークのソーホーで、「キッチン」という、文字どおり台所を改装したライブ・スペースで、奇妙なパフォーマンスを見た。アームの先にポータブルのレコードプレイヤーをつけた、形はエレキギ…

森山大道グッズ入荷!

森山大道さんのアートグッズが入荷しました! 森山大道の写真がプリントされたTシャツ(5,040円)。 「Tシャツはメディアである」もとい、Tシャツはアートである! インパクト大!なクリアファイル(368円)・ポストカード(157円)・リストウォッチ(5,880…

『占領・復興期の日米関係』佐々木隆爾(山川出版社)

→紀伊國屋書店で購入 インド洋上での海上自衛隊による給油活動にかんする法案が、国会で審議される。なぜ、日本はアメリカの「要請」で「国際貢献」しなければならないのだろうか。本書を読めば、その歴史的起源・背景がわかってくる。日本は、戦後、アメリ…

『かえでがおか農場のいちねん』アリス&マーティン・プロベンセン さく / きしだえりこ やく

→紀伊國屋書店で購入 「きせつをたのしむために。」 農場の一年を描いた絵本。 どこからひらいて、どこからながめても、うっとりしているのは、 我が家の5歳の娘です。 我が家では、「絵をよむ」ためにも、 小学生になるまで積極的には字を教えていません。 …

『セルフビルド SELF-BUILD 自分で家を建てるということ』石山修武=文・中里和人=写真(交通新聞社)

→紀伊國屋書店で購入 「建物を建てている夢」というのを、子どものころからよくみる。とにかくよくみる夢なので、場所や状況や建てているもののバリエーションはさまざま、ただし私はいつもリヤカーのようなもので、建築現場に資材をえっちらおっちらと運び…

『火を熾す』ジャック・ロンドン(柴田元幸訳)(スイッチ・パブリッシング)

→紀伊國屋書店で購入 「犬がついてくる、狼がついてくる」 ジャック・ロンドンといえば『白い牙』。だが、そのストーリーは何にも覚えていない。中学生のころに翻訳の文庫本で読み、それから手にとったことがなかった。狼犬の話だった、たしか。アラスカが舞…

『日本料理の歴史』熊倉功夫(吉川弘文館)

→紀伊國屋書店で購入 「食欲の秋に!」 今パリには500軒を越える日本食レストランがあるらしい。用事があり久し振りにオペラ界隈に行ってみたら、見たことも聞いたこともない日本料理店が、まさに雨後の筍のようにできていた。しかも皆結構人が入っているの…

『バーデン・バーデンの夏』レオニード・ツィプキン著、沼野恭子訳(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「ドストエフスキーに会いたい」 このツィプキン(1926-82)の小説は、ロシアの文豪ドストエフスキーについての小説である。ツィプキンは医者であり、その方面では活躍した人らしいが、ソ連体制下で「危険分子」などともみなされていた…

『われらが歌う時』上下巻 リチャード・パワーズ著 高吉一郎訳(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「もうひとつの歴史を保存する図書館のような小説」 今年の7月にエミリー・ウングワレーというオーストラリアのアボリジニーズの女性画家の展覧会を見た。80歳に手が届くころになってはじめてキャンバスにむかい、8…

『田辺茂一と新宿文化の担い手たち』はネットでも購入できます。

ご好評をいただいております、新宿歴史博物館特別展「田辺茂一と新宿文化の担い手たち―考現学、雑誌“行動”から“風景”まで」の図録が、紀伊國屋書店のインターネットショップBookWebでもご購入いただけるようになりました。 田辺茂一と新宿文化の担い手たち―…

『生命徴候あり』久間十義(朝日新聞出版)

→紀伊國屋書店で購入 「医者の良心とは?」 久間十義の作品には、『マネーゲーム』、『聖マリア・らぷそでぃ』等、実際に起こった事件を基にしたものが多い。その意味においては社会派の小説と呼べるのかもしれない。だが、作品をカテゴリー分けすることにそ…

『日本のNPOはなぜ不幸なのか?』市村浩一郎 (赤城稔 取材協力)(ダイヤモンド社)

→紀伊國屋書店で購入 「未来のNPO経営者を応援する書」 NPO法人の経営に関係している人にとって必読書です! NPO法人の経営をしている人、したいという希望をもっている人は、すぐに購入して欲しい。 日本のNPO法人(特定非営利活動法人)のほとんどの経営は…

『The Natural』Bernard Malamud(Farrar Straus & Giroux)

→紀伊國屋書店で購入 「野球格差」 文学関係者の間ではよく、「文学がわかる奴」と「文学がわからない奴」の線をどこで引くかが話題になることがあるが、そう言えば、かつて日本の小学生男子は「野球をする者」と「野球をしない者」とに分割されていたと思う…

【イベント情報】コマ劇場で、渚ようこリサイタルが!

明日10月4日(土)17時から、新宿コマ劇場にて、渚ようこさんのリサイタルが開催されます。 その名も「新宿ゲバゲバリサイタル」! コマ劇場と言えば、云わずと知れた歌舞伎町の聖地にして歌謡曲の殿堂。 今年末に惜しまれつつ閉館されます。 当フェアでもご…

『兄弟(上)(下)』余華著、泉京鹿訳(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「ごった煮の鍋とひんやりした緑豆」 上下2巻で合計900ページほどの大冊だが、こんなに読みやすくていいのだろうかと思うぐらい、読みやすい。作品は「文革篇」「開放経済篇」の2部構成。激動の現代中国を背景に…

『田辺茂一と新宿文化の担い手たち』 ほか、新宿歴史博物館刊行物を絶賛販売中!

ただいま、新宿歴史博物館(※)の人気刊行物を期間限定で販売中です。 新宿本店5階、特設ワゴンにて取り扱い中! 目玉はなんといっても、1995年に開催された特別展「田辺茂一と新宿文化の担い手たち―考現学、雑誌“行動”から“風景”まで」の図録。 長らく絶版…

『わたしの戦後出版史』松本昌次(トランスビュー)

→紀伊國屋書店で購入 「回顧からは希望はみえず。希望は自分たちでつくりだそう」 出版不況といわれて幾星霜。月刊現代、月刊プレイボーイという歴史のある雑誌が休刊される。一方で、年間8万タイトルの書籍が生み出され、その約40パーセントが売れ残って…

『風景の意味―理性と感性』山岸 健【責任編集】(三和書籍 )

→紀伊國屋書店で購入 「策謀と誠実の両立」 全18考の収載論文の中で、北澤裕「インターフェイスと真正性」について考えてみたい。ヘルメス主義から新プラトン主義、策謀のマキャベリ主義と誠実さの相克。合理的ルネサンスの虚像があり、オカルト的ルネサン…

『閉鎖病棟』箒木蓬生(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 ">―浪花節版『ショーシャンクの空の下に』― もとより辛気臭いわたしが曲がりなりにも生活していくためには、必要な条件というものがいくつかある。ある種の感動もそのひとつだ。たとえば、『ショーシャンクの空の下に』を観た(原作は読…

『昭和を騒がせた漢字たち』 円満字二郎 (吉川弘文館)

→紀伊國屋書店で購入 『人名用漢字の戦後史』の円満字二郎氏が昨年出した本である。『青い山脈』の「變文」騒動から幻の煙草「宙(おおぞら)」まで、漢字がからんだ事件をとりあげ、背景にある国民の文字意識を自由と平等の相克という視点から考察している…

『漢字は日本語である』 小駒勝美 (新潮新書)

→紀伊國屋書店で購入 昨年、新潮社から『新潮日本語漢字辞典』というユニークな漢和辞典が出た。普通の漢和辞典は漢籍を読むための辞典で、用例も漢籍からだが、この辞典は『日本語漢字辞典』を名乗ることからわかるように、日本語に使われる漢字を調べるた…