書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2008-01-01から1年間の記事一覧

第25位 『告白』 湊かなえ

→紀伊國屋書店で購入 (双葉社/税込1,470円) 暇つぶしでもかまいません、まず1ページをめくってみてください。私は1行目からひきつけられて、一気読みしちゃいました。「牛乳」が好きでも嫌いでも、この作品から「怖さ」を感じる人は多いはず!どうなる…

第26位 『若者を見殺しにする国』 赤木智弘

→紀伊國屋書店で購入 (双風舎/税込1,575円) 誰かに何かを伝えたい、そういう想いの結晶が本だとするなら、今年一番切実で、濃密で、複雑な想いを孕んでいるのはこの一冊だ。「希望は戦争」という叫びを発せざるを得ない著者のことを、一人でも多くの人に…

第27位 『さよなら渓谷』 吉田修一

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,470円) どこにでもいる夫婦。でも彼らにはある暗い秘密があった。その秘密が明らかになるにつれ、やるせなさが胸に募ってくる。幸せになるために一緒にいるのではない、けれど2人で生きるしかない、こんな絆があって…

第28位 『この写真がすごい2008』 大竹昭子

→紀伊國屋書店で購入 (朝日出版社/税込1,995円) なんてまとまりのない写真の集まりだろう。風景、動物、人の死、くだらない生き様、そしてエロス。しかし、その一枚一枚が見る者の想像力をフル稼動させ、かき乱して行く。一日一枚の写真について必死に考…

第28位 『なぜ君は絶望と闘えたのか』 門田隆将

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,365円) 光市母子殺人事件で突然妻と子を奪われた本村洋さんの9年にもわたる闘いの軌跡が描かれているこの本。本を読んでこれほど泣いたのははじめてだと言える程涙した。あまりの凄惨な状況に涙し、理不尽さに涙し、そ…

第30位 『ひゃくはち』 早見和真

→紀伊國屋書店で購入 (集英社/税込1,470円) 「108」。人間の煩悩の数をタイトルに冠した本書で、読者は青春時代の自分自身との邂逅を果たすだろう。何かに一心に打ち込んでいたあの季節、それでも僕らはいつだって煩悩を抱えていた。大人になった今だから…

『1冊でわかるユダヤ教』 ノーマン・ソロモン (岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 オックスフォード大で教鞭をとっていたラビによるユダヤ教の入門書である。 本書は9章にわかれる。1~3章はユダヤ教とユダヤ人の長い歴史を解説し、4~6章はユダヤ教の風習を紹介する。7~9章では19世紀以降の激動の歴史の中で試行錯誤…

『アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝』スティーブ・ウォズニアック(ダイヤモンド社)

→紀伊國屋書店で購入 「Wozに訊け!」 Apple創業者のひとりSteve Wozniak(Woz)の自伝である。Gina SmithというライターがWozに55回もインタビューして本にしたらしい。 もうひとりの創業者であるSteve Jobsは超有名であるが、 WozはAppleを成功に導いたApple …

『水になった村』大西暢夫(情報センター出版局)

→紀伊國屋書店で購入 「水が村を沈めた、でも流れはいまもそこに」 計画が発表されたのは1957年だそうだ。それから半世紀以上を経て、2008年、揖斐川水源域に置かれた徳山ダムは完成した。面積でいえば諏訪湖に等しく、浜名湖2つ分の水量をもつダム…

『1冊でわかるカフカ』 リッチー・ロバートソン (岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 2004年に出版された最新のカフカ入門の邦訳である。 「最新」と断ったのには理由がある。カフカは80年以上前に亡くなっているが、1982年から旧来のブロート版全集とは相当異なる本文を提供する批判版(白水社から刊行中の『カフカ小説全…

『1冊でわかる文学理論』 ジョナサン・カラー (岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 入門書として有名なオックスフォード大学出版局の Very Short Introductionsが岩波書店から「1冊でわかる」シリーズとして邦訳されている。 フランス産の文庫クセジュは良くも悪くも百科全書の伝統に棹さしており、とっつきにくい面があ…

『世界一利益に直結する「ウラ」経営学』日垣隆、 岡本吏郎(アスコム)

→紀伊國屋書店で購入 「理想から現実をみるな! 現実からの変化を読み行動するのが経営」 倒産したアスコムという出版社が、民事再生手続きにはいったとき、刊行されたのが本書です。凄腕経営コンサルタントと、ベテランのジャーナリストによる対談本です。 …

『勝間和代の日本を変えよう』勝間和代(毎日新聞社)

→紀伊國屋書店で購入 「日本を少しずつ確実に変えるための知恵」 経済評論家の勝間和代さんの新刊です。私はこの人の著作の多くに目を通しており、「もうそろそろ勝間さんから卒業かな」と思っていたのですが、書店で本書を手にとって、即購入してしまいまし…

『なぜ、改革は必ず失敗するのか?』木下敏之(WAVE出版)

→紀伊國屋書店で購入 「改革派の市長の親族がテロに遭う!? 改革は命がけなのか?」 妻の出身が九州の佐賀県K市。よって将来の人生設計には佐賀県とのつきあいを考えることになります。地方経済は危機的な状況にありますから、佐賀県の実情を知るために読ん…

『キューバ 革命と情熱の詩』「地球の歩き方」編集室(ダイヤモンド社)

→紀伊國屋書店で購入 「雑事に忙殺される日本が待っている」 11/12 from NRT日本シリーズは一挙手一投足?凄かったですね 久々にしっかり観てしまいました 渡辺監督は「WBC?それは原監督でしょう」と言ったとか 今成田ですが、出発が遅れています 今夜はバン…

『指揮者、この瞬間』松尾葉子(樹立社)

→紀伊國屋書店で購入 「元気のでる一冊!」 松尾葉子さんは明るく元気な人だ。いつもエネルギッシュで、パワーがこちらにも伝わってくる。パリに来られると、良く我が家で一緒にグラスを傾ける友人でもある。元々ワインはボルドーがお好みだが、最近は私の好…

『鶴見和子を語る----長女の社会学』鶴見俊輔・金子兜太・佐々木幸綱著(黒田杏子編)(藤原書店)

→紀伊國屋書店で購入 「おまんじゅうの番付を作る姉」 先日、父親が亡くなってお通夜を経験した。家庭では見せなかった父親の姿や、自分の生まれる前のことについて聞かせてもらったのはたいへんありがたいことであった。 この本は、2006年、88歳で亡くなっ…

『ある日の村野藤吾 建築家の日記と知人への手紙』村野敦子:編(六耀社)

→紀伊國屋書店で購入 「手入れ人の記録」 2008年8月2日〜10月26日に東京・汐留の松下電工汐留ミュージアムで開かれた「村野藤吾——建築とインテリア」展は、「SECTION3 建築家の内的世界」に愛読書や日記、手帳も展示されていて印象的だった。ぼろぼろになっ…

『最期の教え』ノエル・シャトレ(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 「母が予告した死までのカウントダウン」 ある著名な作家の妻がこう言った。 「車椅子の生活になるくらいだったら死んだほうがまし。」 昔、脇役女優だったこともある彼女は、注意深い自然食主義のおかげなのか、今でもその美貌は色あせ…

『フレンチの達人たち』宇田川悟(幻冬舎文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「食」は文化の大きな柱のひとつとして古今東西、常に歴史とともにあった。中でもフランスのそれは単なる“食事”と片づけけられぬ、至福の調和に満たされた食文化の頂点を担うものとして、現在もファンが多い。 本格的なフレンチディナー…

『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』町山智浩(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 「ブッシュ政権の暗闇時代を笑うべし!」 アメリカという国はじつに面白い。 21世紀型の世界恐慌の震源地として世界中の金融システムを揺るがせている。 国内産業の要である自動車、保険、銀行が破産寸前にまで追い込まれている。 ア…

『論点解説 日経TEST-あなたの経済知力を磨く』日本経済新聞社編(日本経済新聞社)

→紀伊國屋書店で購入 「日経TESTはじまる」、そんなCMが聞こえてきた。はじめ何気なしに聞いていたが、ひょっとしたら大きなきっかけになることかもしれないと思うようになった。新聞社としては、購読者の減少を食い止めるための1方策かもしれないが、大学教…

『シチリアへ行きたい』小森谷 慶子 小森谷 賢二(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「とんぼの本」が創刊25周年ということで慶賀の至りである。便利でハンディな出版形態であって、写真がふんだんに含まれている。雑誌-特に女性誌-の旅行特集などより内容としてずっとよいし、何より情報としてより正確である。コロナ…

アーティストブック販売中

アート集団 SWAMP PUBLICATION のアーティストブックが入荷しました。 『Quest e' non un TAKO-YAKI(これはたこ焼きではない)』(3,990円/3部限定)をはじめ、作品はすべて完全手製本のため部数限定です。 SWAMP PUBLICATION と新宿の関わりは、その主要…

『メディアの実験集「モノサシに目印」 コトバ/デザイン/アソビ』長谷川 踏太(毎日コミュニケーションズ)

→紀伊國屋書店で購入 「デザインとコトバのアイデア玉手箱」 昔の会社の同僚に異常に優秀なデザイナがいて、美しく動きのある秀逸なWebページをサクサク作る様子に常々驚愕していたのだが、なんでメーカーで働いてるんだろうと不思議に思う間もなく、英国の…

『オキーフの恋人 オズワルドの追憶』辻仁成(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「記憶はどこまで信用できるのか?」 日常生活の中で、自分の記憶違いという場面に出会った事のない人はいないだろう。普通は歳と共にその頻度も増えていくはずだ。しかし、その記憶が他者の意志によって刷り込まれたものならば……恐ろし…

『ボン書店の幻 モダニズム出版社の光と影』内堀弘(筑摩書房)

→紀伊國屋書店で購入 「物語のおわり」 『ボン書店の幻』が文庫に! 早速、パソコンと本の山をむこうへ押しやり、ひといきに読み、呆然となる。白地社版を読んだときもおなじだった。二五〇頁ほどのボリュームの本を読んだという気がまったくしないのだ。著…

『徒然王子』島田雅彦(朝日新聞出版社)

→紀伊國屋書店で購入 「ファラオのギャグ」 新刊の手に入りにくいところにいるのだが、縁あって「朝日新聞」連載中の『徒然王子』の第一部を入手した。太宰の次が島田雅彦というのは、別に深い意味はない。 たいへん男っぽい文章である。隙間はあるが、柱は…

『Afgan』Frederick Forsyth(Penguin USA)

→紀伊國屋書店で購入 「いつもながら読み応えのあるフレデリック・フォーサイスのスリラー」 フレデリック・フォーサイスの作品はいつも出だしからスリルいっぱいの早い展開で読者をぐいぐいと引き込んでいくのだが、今回の作品は史実にもとづく物語が前半部…

『ロンドンの公園と庭園』門井 昭夫(小学館スクウェア)

→紀伊國屋書店で購入 ごく大雑把に言って、ロンドンとその周辺の公園はすごくフツーである。何かスペシャルなものを期待する向きであればがっかりするかも知れない。奇を衒ったものがない。ケントの城と名園(シシングハースト、ノール、スコトニ城、ヒーバ…