書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

アメリカン・ブックジャム

『Behind the Beautiful Forevers』Katherine Boo(Random House)

→紀伊國屋書店で購入 「インドの経済成長の外にいる人々」 インド、ムンバイ空港に続く道路。その道路に沿ってコンクリートの壁が伸びている。壁には「Beautiful」という文字と「Forever」という文字が交互に続けて描かれている。この道路はインドの経済成長…

『The Body Artist 』Don DeLillo(Scribner)

→紀伊國屋書店で購入 「シュールで幻想的な作品」 現代のアメリカ文学を代表する作家のひとりドン・デリーロ。彼の著作には『White Noise』や『Underworld』など有名な作品があるが、今回読んだのは『The Body Artist』。 『The Body Artist』はシュール・リ…

『 California Fire and Life』Don Winslow(Vintage Books)

→紀伊國屋書店で購入 「放火調査官が活躍するサスペンス」 アメリカの人気作家ドン・ウィンズロウのサスペンス『California Fire and Life』は、カリフォルニア州オレンジ郡を舞台とした作品だ。 ウィンズロウは、53年にニューヨークで生まれた。ネブラスカ…

『Wasted : A Memoir of Anorexia and Bulimia 』Marya Hornbacher(Perennial)

→紀伊國屋書店で購入 「ブリーミアにかかった少女の話」 昔ニューヨーク・タイムズ・マガジンでシカゴに住む16歳の女子高校生の話を読んだ。その女子高校生は金髪にグリーンの瞳そして長身。チア・リーダーでもある。 だが、彼女には秘密があった。それは「…

『No Easy Day 』 Mark Owen, Kevin Maurer (CON)(E P Dutton)

→紀伊國屋書店で購入 「ウサマ・ビンラーディン急襲作戦の回想録」 2011年の5月、国際テロ組織アルカイダの指導者「ウサマ・ビンラーディン」がアメリカの米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)の急襲作戦により殺害された。 この作戦遂行はネイビー・…

『Tepper Isn't Going Out』Calvin Trillin(Random House)

→紀伊國屋書店で購入 「ニューヨークの駐車スポットを題材にした小説」 ニューヨークに住んで、もう15年近く車を持たない生活をしている。しかし、最初の1年目だけ僕は車を持っていた。アメリカで車のない生活は考えられないので、その前に住んでいたロサ…

『The Dogs of Babel』Carolyn Parkhurst(Back Bay Books)

→紀伊國屋書店で購入 「愛する人を失った悲しみを乗り越えようようとする物語」 アメリカに住んでいてこんな話を聞いたことがある。犬を飼っていた家族が引っ越しをすることになり、犬を連れて車で引っ越しをした。しかし、途中の休憩所で犬が他の犬と喧嘩を…

『The Great Inversion and the Future of the American City』Alan Ehrenhalt(Alfred Knopf)

→紀伊國屋書店で購入 「21世紀に入っての米国の新たな人口の動き」 この間、用があって久しぶりにニューヨークのロワー・イーストサイドを歩いたらあまりに綺麗になっていたのでびっくりした。 おしゃれなレストランやブティックが並び、通りの様子は数年前…

『 Shades of Justice』Fredrick Huebner(Simon & Schuster)

→紀伊國屋書店で購入 「法医学者ウィル・ハットンが活躍する法廷スリラー」 今回、読んだ本は、法廷スリラーの『Shades of Justice』。著者のフレドリック・ヒューブナーはシアトル州で資格を持つ弁護士だ。 「弁護士が書く法廷スリラー」。どこかで聞いたこ…

『The Greatest Player Who Never Lived : A Golf Story』 J. Michael Veron(Broadway Books)

→紀伊國屋書店で購入 「史的事実も交えたエンターテインメント性の高いゴルフ・ストーリー」 もう二〇年以上昔の話となるがニューヨーク州ロングアイランドに住んでいた頃、近くにゴルフ場があったので、ゴルフ好きな友人に連れられゴルフをやった。 それま…

『The Year of Magical Thinking』Joan Didion(Vintage Books)

→紀伊國屋書店で購入 「ジョーン・ディディオンの心の風景」 村上春樹の翻訳者であるジェイ・ルービンがニューヨーカー誌のポッドキャストである「New Yorker: Out Loud」(2011年8月30日付)で翻訳文学作品は読むなと言っている。何故なら作品はほか…

『Layer Cake』 J. J. Connolly(Black Cat)

→紀伊國屋書店で購入 「足を洗いたいイギリス人マフィアの最後の仕事」 A life of leisure.日本語にすると悠々自適の生活。アメリカ人やイギリス人の思い描く理想の人生のひとつとしてこの a life of leisureがある。 素早くお金を儲けて若いうちに仕事を引…

『The Art of Making Magazines』Victor S.Navasky, (編集), Evan Cornog, (編集)(Columbia University Press)

→紀伊國屋書店で購入 「コロンビア大学ジャーナリズム科の雑誌についてのレクチャー」 アメリカの作家/脚本家で作家ジョーン・ディディオンの夫であったジョン・グレゴリー・ダンによると雑誌ジャーナリズムでは最終的に「Why」が「Who」「What」「Where」…

『Home Town』Tracy Kidder(Washington Square)

→紀伊國屋書店で購入 「ニューイングランド地方のカレッジ・タウンが舞台となった小説」 ピューリッツァ賞作家、トレーシー・キダーの小説『Home Town』はニューイングランド地方の小さな町を舞台とした小説だ。ニューイングランド地方とは、ニューハンプシ…

『 Pasquale’s Nose: Idle Days in an Italian Town』Michael Rips(Back Bay Books)

→紀伊國屋書店で購入 「イタリアのおかしな田舎町」 今回紹介するのは、イタリア紀行。ニューヨークにあるチェルシー・ホテルに住んでいた著者は、毎日カフェで無駄な時間を過ごしている。しかし、その無駄な時間の多い生活に満足していて「こちら側の枯れて…

『Bringing Up Bebe : One American Mother Discovers the Wisdom of French Parenting』Pamela Druckerman(Penguin )

→紀伊國屋書店で購入 「子育てレンチ・スタイル」 自分の母国ではない国で子供を育てるのはいろいろ戸惑うことも多い。その国の文化のなかで、子供とどう向き合うか。問題が発生した時に、どう解決していくかなど悩みは尽きない。 今はニューヨークで子育て…

『Havana Bay 』Martin Cruz Smith(Ballantine Books)

→紀伊國屋書店で購入 「キューバを舞台として読み応えのあるスリラー」 今回読んだ「Havana Bay」は「Gorky Park」」や「Polar Star」などに続きロシア人調査官、アルカディ・レンコが登場するマーティン・クルーズ・スミスの作品。旧ソ連の影響力が弱くなっ…

『A Farewell to Arms : The Hemingway Library Edition』Ernest Hemingway, Patrick Hemingway(前書き), Sean Hemingway (インロダクション)(Scribner)

→紀伊國屋書店で購入 「ヘミングウェイが考えた違ったエンディングが読めるエディション」 出版社スクリブナーの編集者チャールズ・スクリブナー3世にヘミングウェイについて話を聞いたことがある。 チャールズ・スクリブナー3世は名前の通りはスクリブナ…

『Bitch』Elizabeth Wurtzel(Anchor Books)

→紀伊國屋書店で購入 「バッドガールの作り方」 ニューヨークを捨ててサンフランシスコに帰ってしまったカメラマンが、僕にこう言ったことがある。 「新しい社会への反抗の仕方を考え付いた奴は、すごい金持ちになるよ」 そのカメラマンはバロウズやギンズバ…

『True Prep 』Lisa Birnbach(Alfred A. Knopf)

→紀伊國屋書店で購入 「新たなプレッピーのハンドブック」 1980年。ニューヨークでプレッピー・ファッションが流行しだした頃、僕はマサチューセッツ州ボストンで大学生をやっていた。81年にはハーバード大学でサマーコースを取り、ハーバード・スクエ…

『The Traveler』John Twelve Hawks(Vintage Books)

→紀伊國屋書店で購入 「果てしなく続く「善」と「悪」との戦い」 アイザック・ニュートン、イエス・キリスト、ジャンヌ・ダルクなど人類の歴史を大きく変えた人物たち。彼らはみんなトラベラーだった。 スリラー作家ジョン・トェルブ・ホークスの『Traveler…

『Up in the Old Hotel and Other Stories 』Joseph Mitchell(Vintage Books)

→紀伊國屋書店で購入 「ジョゼフ・ミッチェルのニューヨーク」 グリニッチ・ビレッジにも夏が来たようだ。ワシントン・スクエアの真ん中にある噴水にも水が張られた。ストリート・パフォーマーたちも戻ってきた。 平日の午前中のワシントン・スクエア。平日…

『New York Diaries : 1609 to 2009』Teresa Carpenter (EDT)(Modern Library)

→紀伊國屋書店で購入 「人々の住んだニューヨークを日記で綴る」 ニューヨークに住んでいると、この街の歴史を感じることが多い。僕は夜にアパートを出て外のベンチに座り、通りをぼーっと眺めていることがある。以前はソーホーを夜に散歩するのが好きだった…

『Broke Hear Blues』Joyce Carol Oates(Plume )

→紀伊國屋書店で購入 「ジョイス・キャロル・オーツが描く心の地図」 表紙に惹かれて本を買うという買い方があるけれども、ジョイス・キャロル・オーツの『Broke Heart Blues』がまさにそうだった。 ピンクのキャデラックに米国北東部の秋の風景が映ったカバ…

『 A Natural Woman』Carole King(Grand Central)

→紀伊國屋書店で購入 「キャロル・キングの心温まる自伝」 ポップ歌手キャロル・キングが生まれたのは1942年2月。2012年の今年彼女は70歳だ。 60年代、70年代に青春を過ごした人のなかには、キャロル・キングのアルバム「つづれおり」から聞…

『The Bluest Eye』Toni Morrison(Vintage Books)

→紀伊國屋書店で購入 「トニ・モリソンの最初の小説」 アメリカの都市に住む黒人と、田舎で暮らす黒人の違いに気が付いたのは、ミシシッピ州オックスフォードの町に行った時だった。ニューヨークやロサンゼルスで会う黒人のなかには、いわゆる「ギャングスタ…

『The Decoy』Tony Storng(Transworld Publishers)

「人間の精神の暗い部分に光をあてたサイコスリラー」 誰もがみかけとは違う人間性を内に秘めている。イギリスのサイコスリラー作家トニー・ストロングの最新作『The Decoy』。この作品を貫くテーマはこんな言葉であらわせるだろう。別の言葉を使うとすれば…

『Coming Apart : The State of White America, 1960-2010』 Charles Murray(Crown )

→紀伊國屋書店で購入 「1960年から現在までにアメリカ白人社会に起こったこと:保守派からの声。」 アメリカの保守系シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」の研究員であるチャールズ・マレーの新刊。 マレーは「ベル・カーブ」という著作(リ…

『The Sleep-Over Artist 』Thomas Beller(W W Norton)

→紀伊國屋書店で購入 「独身男性も楽じゃないと思える作品」 ニューヨークに住んでいる僕にとって、ニューヨークがたくさん出てくる物語はそれだけで楽しめる。きっとこの街が好きなのだと思う。 W・Wノートン社より出版されたトマス・ベラーの短編集『セ…

『Cadillac Jukebox』 James Lee Burke(Hyperion)

→紀伊國屋書店で購入 「ご存知、刑事デイブ・ロビショーが活躍するエンタメ小説」 アメリカの人気スリラー作家、ジェームス・リー・バークのインタビュー記事がニューヨーク・タイムズ紙に載った。 刑事デイブ・ロビショーが活躍するディテクティブ・ストー…