西堂行人
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](33) 2007年8月をもって新国立劇場「演劇部門」の芸術監督の任期を終えた栗山民也氏が初めての著書を刊行した。題名もずばり『演出家の仕事』。7年にわたる彼の激務の一端を知るに格好の書だ。わたしも昨年、同名の…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](32) 今年の演劇界は異例なほど、ギリシア悲劇を題材とした舞台が多かった。2500年前に起源を持つギリシア悲劇に、特段エポック的な何かがあったわけではないが、現状が見えにくくなってくると、演劇の原点たるギリ…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](31) 6月8日に亡くなった観世榮夫氏の“死”は、なんとも痛ましいものだった。彼は5月2日に自ら運転する自家用車で事故を起こし、長年行動をともにした敏腕プロデューサー、荻原達子さんを死に追いやってしまったのだ…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](30) ジャンルに囚われているところに批評はない。批評とは、自分の拠って立つジャンルへの安住が奪われる時に始まるのではないか。批評が「危機」と同義の critical という形容詞を持つのは、おそらくそこに理由が…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](29) この夏、当書評ブログで取り上げた二人の著者が亡くなった。一人は、劇作家で演出家の太田省吾さん。『なにもかもなくしてみる』(第13回)という不思議なタイトルを持つ演劇エッセイ集の著者である。もう一人…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](28) 中田英寿の右足から繰り出されるアーリークロスが忘れられない。 16歳の彼はまだ胸板の薄い、あどけなさを残した少年に過ぎなかった。周りに使われ、右タッチライン沿いをゴムまりのように疾駆する姿はまるで…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](27) 日本演出者協会は「演出者の仕事」と題したシリーズを企画しているが、昨年、その第一巻が出た。副題は「60年代・アングラ・演劇革命」。この本はわたしも共同編集者の一人として携わり、内容構成や執筆者のリ…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](26) 本書は「1960年代」という時代と「在日問題」、そして「越境」をテーマとしている。なぜこの三つが結びつくのか。それが本書を読み解く鍵となる。 著者・鈴木道彦氏はプルーストの『失われた時を求めて』の翻…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](25) 「知識人」という言葉にマイナスイメージが付与されるようになったのはいつからだろうか。口先だけで行動しない、言葉は華麗だが実質を伴わない――こういう非難は、多くの知識人たちが、本来もっているはずの行…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](24) 胸倉を鷲づかみにされ、激しく殴打されるような感覚に襲われた。甲冑を身にまとった男たちとウェディングドレスに包まれた女性たち。だが彼(女)らは耽美的に舞台にいるわけではなかった。拷問に近い肉体の酷…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](23) 劇評家の「資質」とは何か。 誤解をおそれずに言えば、それは苛烈な劇の現場に立ち会いたいという欲望の強さではないだろうか。今、もっとも刺激的で時代を凝縮した現場に出会いたい。そのためには、独自の嗅…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](22) あなたは韓国という国を好きですかと聞かれると、なかなかうまく答えられない自分に気づく。好きでもあれば嫌いでもある。いや、そういう答え方では何も言ったことにならない唯一の国が「韓国」ではないか。…
→紀伊國屋書店で購入 「劇評家の作業日誌(21)」 演劇や文学にあまり知識がなくとも、イプセンの名前を知らない日本人は、きわめて少ないだろう。イプセンはチェーホフと並んで、シェイクスピアの次に日本に翻訳された劇作家であり、明治以降の歴史の教科書…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](20) 1980年代は「オタク」と「バブル」で括られようとしている。「80年代はスカだった」とは雑誌「宝島」の80年代特集のキャッチコピーだが、いずれも80年代をネガティヴに語る口調で共通している。軽薄な文化が…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](19) 本書の著者、小阪修平さんに初めて会ったのは、たしか新宿のスナックだった。その時、なぜか将棋を指したことを覚えている。その勝負はどちらが勝ったか、今では定かではないのだが、白熱した好勝負だったこと…
→紀伊國屋書店で購入 『昭和史』の戦後編が刊行された。五六〇頁を超す堂々たる大著だ。前著が刊行されたのが2年前だから、わずか数年で1000頁以上の書物が生み出されたことになる。 昭和という元号は1926年から1989年までの64年間を指す。こ…
[劇評家の作業日誌](17) 前回予告した通り、ワールドカップのさなかのドイツに行って来た。日本でもサッカーはずいぶん市民権を得てきたように思ったが、やはり「本場」の迫力、浸透度は違っていた。毎日3時過ぎになると、街頭に張り出された特設のTV…
→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「劇評家の作業日誌(16)」 4年前、一人のブラジル人が日本サッカーの代表監督に招かれた。彼は80年代の世界サッカーシーンでもっとも活躍したスーパースターであり、93年日本で初めてプロリーグが開設され…
→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](15) 唐十郎の著作が一挙に3冊刊行された。戯曲、エッセイ、アンソロジーと多種多様だが、改めて唐氏の現在が確かめられて興味深い。 ここ数年、唐氏へ熱い注視が再…
→紀伊國屋書店で購入 「劇評家の作業日誌](14) 現在の演劇評論を代表する扇田昭彦氏は、もっとも多産な批評家の一人だ。すでに10冊以上の著書を持ち、60年代以降のアングラ・小劇場運動を世に知らしめた最大の功労者であることは周知のことだろう。…
→紀伊國屋書店で購入 「劇評家の作業日誌(13)」 今回は昨年から読み進めていた本書をとりあげよう。 太田省吾氏は、1960年代以降の現代演劇を代表する劇作家・演出家であり、77年に発表された出世作『小町風伝』以来、「沈黙劇」で知られる前衛的…
→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「劇評家の作業日誌 12」 演芸や芸能という言葉は今どのように受け止められているのだろうか。長らく芸能の世界で批評やコラムを書かれてきた矢野誠一氏の新著は、この問題をいろいろな面から考えさせてくれる。 著…
→紀伊國屋書店で購入 「[劇評家の作業日誌](11)」 今年は韓国映画の新作旧作の上映がことの他目についた一年だった。 池袋・新文芸座での韓国映画特集に始まり、新宿・シネマスクエアとうきゅうでの連続上映、12月に入って大阪での「韓流エンターテ…
→紀伊國屋書店で購入 「[劇評家の作業日誌](10)」 今年の日本演劇学会「河竹賞」ならびに演劇評論家協会主催の「AICT賞」をダブル受賞した本書について、先日記念シンポジウムが行なわれた。題して「演劇史の再考--田中千禾夫をめぐって」。パネラ…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](9) わたしはこれまで同時代の思想家の発言に注目してきた。なかでも社会学者、大澤真幸の著作には幾度もうならされた経験がある。彼特有の原理的思考によって対象の本質が鮮やかに浮かび上るとき、わたしは上質…
→紀伊國屋書店で購入 「[劇評家の作業日誌](8)」 小説を読むことが少なくなった。演劇書以外の評論やエッセイに比べると、小説の読書量はほんとに微々たるものにすぎない。それでも同時代の作家のなかには目を離せないと思う者も何人かいる。その一人が…
[劇評家の作業日誌](7) 7月下旬から8月初旬にかけて、フランスへ演劇の旅に出た。世界的なフェスティバルであるアヴィニョン演劇祭に行くのが目的だった。 アヴィニョンといえば、1309年、法王がローマから居住を移し、一時期教皇権を置いた地とし…
[劇評家の作業日誌](6) このところ島尾敏雄の『死の棘』に取り憑かれている。正確にいえば、わたしの思考にこの「棘」が突き刺さってきて、その周辺にいろいろなものが掻き集められてきてしまうのである。 『「死の棘」日記』が刊行されたのは今年の三月…
[劇評家の作業日誌](5) チェーホフの魅力とは何だろうか? 日本人の読者に幅広く親しまれ、現在でも多くの上演が行なわれているチェーホフとはいったい何者か。昨年が没後百年に当たり、チェーホフ関連の書籍が数多く出版されたが、なかでも暮れも押し迫…
→三島由紀夫が死んだ日 →続・三島由紀夫が死んだ日 [劇評家の作業日誌](4) 三島由紀夫が割腹自殺して35年になる。また今年は生誕80年に当たり、もし彼が存命なら、どんな老大家になっていただろうかと思うと、その早すぎる自死が惜しまれる。 だがそんな…